本年度も、昨年度と同様に、実態調査の分析と平行して、理論研究を行った。いわゆるADR法の制定を機に、各種の民間ADRが設立ないし制度改正を進めており、それを考慮した理論的枠組が必要となってきている。賛否についての意見が大きく分かれているADR法上の認証制度がADR全体の機能にどのように影響を及ぼすかについての理論的検討を進めるために、弁護士や行政書士などにインフォーマルにインタビューを行い、その評価についての検討を行った。 また、昨年実施した、ADR利用に際しての市民の期待に関する法意識調査に加えて、本年度は法律相談というADR利用への入り口ともなる場において、市民がそこに何を期待しているかを確認するために法意識調査を実施した。その主たる目的の一つは、法律相談が法律問題の処理に特化したものとして市民に意識されているのか、それとも他のADR利用を意識しながら多様な紛争処理への一歩として意識されているのかを明確化することにある。調査結果の分析については、昨年度の調査結果と併せて、引き続き行う予定である。 なお、法律相談自体が一種の裁判所外ADRであるといいうるが、更にそのような法律相談がどのようにその他のADRと連携することによって、我が国のADR全体の機能拡大をもたらしているか、またもたらしうるかについて、実際の法律相談の経験者、法律相談の担当弁護士、法律相談の運営者等の意見を伺った。法律相談を通じた裁判とADRとの分業と協働については、次年度においても更に検討を進める予定である。 次年度においては、これまでの理論的な検討結果を整理し、また調査結果の分析を進めた上で、結果を公表する予定である。
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