17年度は、(1)「行政の経済化」に関するドイツの議論のまとめ、(2)日本の行政改革、法制度改革に関する経済学的分析に基づく議論に関する法的な分析、を行った。 (1)については、作業の結果、ドイツ制度派経済学の議論を法律学の立場から分析したK.Voskuhleの論文等において、法律学的な制度の設計・法解釈等に際しては、「効率性」の視点以外にも、衡平性、社会的慣習、伝統的な価値観等、様々な要素を踏まえて作業をすべきであり、経済的分析・制度設計については、守備範囲・限界が明確にされるべきことが主張されていること、が確認できた。このテーマについては、平成18年10月頃に論文の公刊を予定している。 (2)については、鈴村興太郎氏(奥村=鈴村『ミクロ経済学II』(岩波書店))、アマルティア・セン氏、及び若松良樹氏の議論等を分析した結果、次のことを確認できた。すなわち、1.「法と経済学」の基礎を開いたコースの定理については、初期の権利配分の相違によって所得効果が生じないことが前提とされており、その妥当範囲は従来理解されているよりも狭いものであること等、法制度分析の視点としては限界があること、2.経済学上も、規範的提言をする際には、「効率性」には限界があること、効率性と衡平性との調和が必要であることが共通の認識とされていること、3.したがって、制度の経済学的分析は有用であるものの、法的には他の視点を踏まえた考察が必要であること、等である。(2)の点については、17年10月に開催された日本公法学会第70回総会における報告「公務員制度改革と公法系教育」において、その成果の一部を公表した他、最終年度の18年度中の公刊を予定している。
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