・ドイツ制度派経済学の議論を法律学の立場から分析したドイツ行政法学における議論等を参考にしつつ、法律的な制度の設計・解釈に際しては、「効率性」の視点に加え、衡平性、社会的慣習、伝統的価値観等、様々な要素を踏まえて作業をすべきであり、経済的分析・制度設計については、その守備範囲・限界が明確にされるべきことを、公務員制度改革に関する議論を題材としながら、強調した学会報告(平成18年の日本公法学会の総会報告)を文章化した論文を平成18年度に公表した。 ・また、鈴村興太郎(奥村=鈴村『ミクロ経済学II』(岩波書店))、アマルティア・セン(『効率性と衡平性』(岩波書店)等)、若松良樹(『センの正義論』(頸草書房))等を題材として、コースの定理、制度派経済学の制度設計が法律学上の議論にとって有効性をもつ射程の範囲を明らかにし、経済性と効率性とのバランスがとれた制度設計・解釈論をどのように行なうべきかについて、大学院の講義等を通じて教育した。これについては、経済学の議論を自らのものとして再整理するのに予定よりも時間を必要としたため、平成19年度中に成果を公表する予定である(高橋滋「続・法と政策の枠組み-法制度設計における効率性と衡平性」一橋法学6巻3号に発表予定)。 ・その他、公共性及び個人の権利保護と、効率性とのバランスを踏まえた制度設計が問題となる行政改革について、公文書管理制度の改革、環境保護と地方分権との関係等の題材を具体的に取り上げて分析する論文、図書を平成18年度に公表した。
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