最終年度になった本年度は、地方財政制度改革をめぐり地方分権改革推進会議と地方制度調査会との間で軋榛が生じている「三位一体改革」について、総括的な分析・検討を行った。いわゆる平成の大合併と地方制度調査会が一部を公開している「道州制案」にかかわって、地方財政制度のあり方に直接関係する事務配分についての立法作業が進められているが、この肝心の「事務配分」の憲法的評価にかかわる検討である。具体的成果の一つとして、この重大な憲法課題をいわば代表している喫緊の一課題としての「国民健康保険制度」について行った法的検討(上記「研究発表」参照)を挙げておこう。 周知のように、財源配分は、2006年度税制改革による所得税減税と抱き合わせで住民税に移譲するという形で行われた。地方交付税改革とあいまって、地方公共団体間の厳然たる「経済力格差」によって、必要不可欠な税源等の移譲に結びつかない虞が大きい。むろん、いわゆる補助金の選択的削減が、とくに国庫負担金等の特定財源が果たす「標準行政」の維持さえ危うくする虞も大きい。そのことが示唆しているかのように、本研究の終期になって、とうとう「地方分権改革推進法」を制定して対応せざるを得なくなっている。本研究に継続課題が新たに提示されたといえよう。 なお、本研究の成果を海外に発信する意味から、近隣の東アジアの諸国でその成果の一部を公表する機会を持った。2006年9月に、韓国法制研究院Korea Legislation Research Instituteの招聘によって、ソウルで行われた国際シンポジウムにおいて「現代財政法の諸課題-財政の公共性と透明性に照らして」とする報告である。韓国の公法系め学会でも興味を持たれている地方財政制度改革について、それが国全体の財源の民主的配分の増進につながり、ひいては国家財政全体の透明性の向上に寄与することを報告した。
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