本年度は、昨年度に行った無形資産の概念と時価評価課税に関する研究を基礎として、以下の知見を得た。 ・無形資産に対する課税上の所有(保有)(tax ownership)が、特に国際課税が問題となる場合に問題とされうる。 ・課税上の所有は、所得の源泉地国の判定(源泉徴収)に加えて、無形資産の譲渡(移転)の有無の判断(譲渡損益課税とされるかどうか)に関して問題となる。譲渡の有無の判断は、米国では、問題となる無形資産に対する実質的な権利の全部(all substantial rights)を手放したかどうかを重視して行われている。判断の方法には、自己作成したものか譲り受けたものかや、特許権、ノウハウ等の無形資産の種別による差異が認められる。 ・移転価格税制の適用においては、内国歳入法典482条の所得対応(Commensurate with Income)基準の適用が、特に譲渡が認められなかった場合(ロイヤリティとされた場合)、潜在的に高い収益力があると認められた無形資産について、今日も問題となっている。 ・無形資産がそれを保有する法人ごと譲渡される場合として、株式交換や合併といった組織行為による場合がある。特に株式交換では、無形資産の評価額は株式の対価として現れる。ところが、2006年改正による日本の株式交換税制では、非適格とされた場合に子会社資産を時価評価することとされており、両者の差による問題が生じる可能性がある。
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