無形資産の認識や評価について、会計学では、(1)時価(市場での実際の取引価格)に基づく方法、(2)将来のキャッシュ・フローに基づく方法、(3)開発費用に基づく方法が主に議論されてきたが、税法の観点からは、いずれも課税の基礎とするに足りる信頼性と客観的検証可能性を持った評価方法ということができない。そのような評価方法は、これら以外にも、今のところ見出すことができない。したがって、無形資産に対する時価評価を行わなくても十分に機能する税制を目指さねばならないことになる。 そのような税制では、できるだけ時価評価の機会を少なくするために、組織再編成における適格要件を拡張し、たとえば対価として一定の現金が含まれる場合も適格とすべきである。また、株式交換完全子会社や連結加入法人に対する時価評価を廃止すべきである。損失の持込については、組織再編成や連結後において、制限を課すべきである。現在行われている時価評価では、無形資産の要素が抜け落ち、または恣意的な評価が行われ、課税逃れやインバージョンを通じた日本の課税権への侵害が生じている恐れがある。 売買等の取引(課税取引)では、取引に含まれた無形資産も課税の対象となる。このとき、私人間で合意された対価等の取引条件を課税の基礎として受け入れるか否認するかの判断では、課税前利益を増加させようとするインセンティブと、税負担を軽減しようとするインセンティブを比較すべきである。前者が大きい場合には、取引を否認すべきではない。
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