伝統的通説は、行政法の基本原理として、明治憲法で確立した、(1)法律の法規創造力、(2)法律の優位、(3)法律の留保の3原則を維持してきた。しかし、これは天皇主権(立憲君主制)には適合的であったであろうが、国民主権の日本国憲法には相応しくない。むしろ英米法を淵源とする「法の支配」に調和する行政法原理を創造する必要がある。本研究は、アメリカで発展したデュー・プロセスの法理に着目し、その分析の中から普遍的行政法理論の示唆を得るとともに、日本に適合的な基礎理論の構築を目指したものである。 アメリカ法でもデュー・プロセス論は初期には実体的側面が注目されたが、現在では手続的側面に重点がおかれるようになった。本研究が着目したのはデュー・プロセスの根底にある価値論である。手続そのものからは、正確性、能率性、受容性の価値が引き出されるが、近時は、これに政府決定が個人の尊厳に関ることを強調して再構成する主張がある。研究の成果として、私の行政法理論を集約した「行政法総論」(岩波書店、06年度7月刊)の改訂版において、≪行政法の基礎理論≫を全面的に書き換える予定である。
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