本年度の研究計画としては、1.国際公務員の法的地位(4月〜10月)および2.国際行政裁判所制度(11月〜3月)を中心に検討することにあった。 まず、1.については、各国際機構の設立文書や実行を通じて、いかなる制度が生成されてきたかを探り、その中で、国際公務員の国際的性質を導き出した。ここでは各国際機構の内部文書や職員諸規則の検討を中心として行った。特に、中心的問題と思われる、国際機構の派遣職員の問題を取り上げ、内外の文献を積極的に収集し、研究を行った。派遣職員は、自国政府と国際機構の双方に忠誠を誓わなければならないデリケートな地位に置かれている。その地位の抱える問題点を検討することにより、国際公務員の法的地位が浮き彫りになった。 2.については、国際行政裁判所制度の研究について、国際行政裁判所規程の分析が不可欠である。そのため、出張や国際機構への直接の連絡などを重ねて、主な国際行政裁判所の裁判所規程を収集した。国際行政裁判所規程の分析枠組みとしては、行政裁判所の構成、管轄、その他の手続(特に、再審査手続)が検討の中心となった。国際公務員法の法源については、国際行政裁判所において、いかなる法的基準が用いられているかを検討することになる。基本的な分析枠組みとしては、国際機構の設立文書、任用契約、職員諸規則、法の一般原則、その他の基準という構成で検討を進めた。研究に必要な資料調査先および研究連絡先としては、主として、東京の国連広報センターや東京大学、京都大学、神戸大学の国連寄託図書館を利用した。 なお、これまで行った研究と来年度の研究成果を併せて公表するため、来年度中に著書を出版することを計画しており、平成18年度学術振興会研究成果公開促進費に申請を行った。
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