本研究は、原子力施設においてまたは放射性物質の運送途中で原子力事故が発生し、その被害が国境を越えて、日本を含む近隣アジア諸国で人身または財産に損害を出した場合に、その賠償を行うための国際的なシステムの構築を主たる目的としているが、研究の初年度である今年度は、上記研究の前提となる以下のような基礎的研究を実施した。 (1)国際原子力損害賠償に関する諸問題及びその法的規律の現状を明らかにするために、関連する法令、条約、書籍、論文、資料等について最新の情報を調査してデータ化するとともに、今後の研究をスムーズに進めるために整理した。 (2)この情報をもとに、入手できる書籍、論文、資料等を収集し、さらに文献等の情報を得た。特には、1960年代の原子力平和利用黎明期における文献および海外の新しい書籍の収集に一定の成果を見た。また、国際原子力損害が環境法の枠組みにおいて有する意義を検証するため、環境法の文献も調査・収集し、総合的な研究に向けた第一歩とした。 (3)国際原子力損害賠償システム構築のために有力な選択肢である1997年改正ウィーン条約と補完的補償条約に対する近時の関心について、電力会社等に出向き、担当者に対してインタビューを行った。そこでは、政府を含めた内外の動向について、2001年の頃と比べてあまり変化がないことが判明した。 (4)来年度の研究の計画を具体化する作業のために、調査・収集した文献および情報を整理した。
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