本研究は、原子力施設においてまたは放射性物質の運送途中で原子力事故が発生し、その被害が国境を越えて、日本を含む近隣アジア諸国で人身または財産に損害を出した場合に、その賠償を行うための国際的なシステムの構築を主たる目的とする。研究の2年度目である今年度は、初年度の基礎的研究を前提として、以下のような研究を実施した。 (1)国際原子力損害賠償に関する諸条約、国際原子力事故および安全に関する諸条約、これらに関する各国国内法、ならびに危険物質の国際的な移動と国際環境保護の法制度について調査を行った。資料の整理・分類と平行して、文献、情報等の読み込みおよび検討も行った。 (2)入手できる書籍、論文、資料等を収集し、さらに文献等の情報を得た。特に、国際原子力損害賠償に関する諸条約の注釈報告書および海外の新しい書籍の収集に一定の成果を見た。また、国際原子力損害が環境法の枠組みにおいて有する意義を検証するため、環境法の文献も、鋭意継続して調査・収集した。 (3)近隣アジア諸国と、国際原子力損害賠償に関して発展的な条約を作成しているIAEA本部(オーストリア国ウィーン)への海外渡航を行い、条約作成の関係者と面談し、詳細について調査および意見交換を行った。 (4)来年度の早い段階において、国際原子力損害賠償制度における損害概念および準拠法決定についての研究成果をまずは発表するために、具体的な論文執筆に向けた作業に取りかかった。
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