本研究は、日本、韓国、中国、台湾および朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)を含めた近隣アジア諸国・地域における原子力開発の現状と法状況を直視し、各国による損害賠償法システム・ネットワークの構築が必要であるとの観点から、越境的な原子力損害賠償の総合的な法システムの構築を、近隣アジアに関して研究するものである。研究において具体的には、国際原子力機関(IAEA)において1997年に作成された「1963年の原子力損害についての民事責任に関するウィーン条約を改正する議定書」と、各国から拠出される資金による追加的・補完的な補償制度を創設する「原子力損害についての補完的補償に関する条約」への各国による加盟が効率的であることを明らかにする。研究の最終年度である今年度は、前2年度の研究を前提として、以下のような研究を実施した。 (1)国際原子力損害賠償に関する諸条約、国際原子力事故および安全に関する諸条約、これらに関する各国国内法、ならびに危険物質の国際的な移動と国際環境保護の法制度について、引き続き調査を行った。資料の整理・分類と平行して、文献、情報等の読み込みおよび検討も行った。 (2)入手できる書籍、論文、資料等を収集し、さらに文献等の情報を得た。特に、国際原子力損害賠償に関して開催されたシンポジウムの報告書籍の収集に一定の成果を見た。また、国際原子力損害が環境法の枠組みにおいて有する意義を検証するため、環境法の文献も、鋭意継続して調査・収集した。 (3)国際原子力損害賠償制度における損害概念および準拠法決定についての研究成果を発表するために、論文執筆に取りかかった。
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