本年度の研究の進め方としては、当初の研究実施計画どおり、国内外のとくに国連・国際法関連の文献・資料の収集および整理を行い、また、内外の国際法関係の研究者と国連問題に関する意見交換を行った。消耗品費、国内外旅費および謝金はこれらに当てられた。これらの資料を使って研究に取りかかり、まず、国連の機構のあり方および国連改革をめぐる問題を検討した。 国連家族ともいえる国連加盟国(今日ではほとんどすべての国)、とくに国連憲章第7章の下に入る紛争(国際紛争のみならず内戦や民族紛争を含む)の状態にある諸国の民主化を実現あるいは促進するためにも、そのための活動を行う国連の諸機関とくに安全保障理事会(安保理)自身の民主化が必要なことを明らかにし、および、そのための諸条件について研究し、「国際連合と民主主義」という論文(研究発表参照)にまとめた。また、国連発足から今日にいたる国連改革の諸提案とその国際的背景を検討し、なかでも安保理改革についていわゆる拒否権の制限や廃止の可否の問題および常任理事国の拡大提案などをとりあげ、国連改革のあり方とその展望を探った。その成果は、「国連改革の歴史的展開と意義」という論文(研究発表参照)として発表した。 そのほか、国連法体系の下にある国家の戦争責任の問題を被害者個人が請求する戦後補償の裁判の側面から検討を加え、「戦後補償の理論問題」と題して発表した。 さらに、本年度末から、国連憲章7章に関連する諸問題、なかでも9・11テロ事件以後の国際社会で生起してきたアフガニスタン戦争やイラク戦争の国連憲章上の位置づけについても検討を始めている。
|