前年度の研究に引き続き、本年度は、国連や国際法関係資料の収集およびとくに外国の国際法研究者との意見交換などを通じて研究を進め、本研究目的の完成を目指した。そのため研究計画に沿うて、国際連合憲章第7章研究の中心的課題である国連安全保理事会のいくつかの側面における活動の問題を主に研究した。すなわち、イラク戦争の展開における国連の役割について安保理決議などを検討し、また、国連改革問題の核心である安保理改革について種々の提案を研究し、安保理のあり方について検討した。暫定的な結論としては、イラク戦争についても安保理のより積極的コミットメントが求められ、この観点からも安保理改革が必要であるが、今後も引き続き国連をめぐる実行を研究しなれば、現段階で早計に確定結論ないし積極的結果を引き出せない。他方、安保理の活動の中で注目される、国際刑事裁判所(ICC)との協力関係ないし権限関係の問題については、国際刑事裁判所ローマ規程に基づく、「国連とICCの間の連携関係協定」を検討し、さらにローマ規程13条により、安保理による武力紛争や「平和に対する脅威」の事態のICC検察官への付託の問題を研究した。その最初の事例として、安保理決議によるスーダンのダルフール事態の付託および検察官による捜査開始決定について取り扱った。結論的に、21世紀における国際(刑事)秩序の観点からも国連がICCの独立性を維持しつつ、事態の付託を通じてICCと積極的協力することが展望される。
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