中国労働法は、市場経済の導入とグローバル化の渦中にあって、めざましいスピードで進化しつつある。本研究は、日本および中国の労働法研究者が、意見交換を通じた研究によって、そうした中国労働法の全体像について、体系的・総合的に解明することを目的としている。また、それらを通じて、日中両国の研究者の共同研究・共同執筆により、中国労働法に関する体系書の執筆および出版を予定している。 日中関係は、経済的側面においては強い相互依存関係にあるが、法文化や法政策の面では、相互交流は十分でない。特に後発分野である労働法研究のレベルでは、相互理解に基づく共同研究はほとんどみられなかった。実質的な協力関係を構築し、労働法への共通認識を通じて社会・経済への貢献をなすことは、本研究の重要な意義ということができる。 本研究の期間中に、中国労働法はさらに重要な深化がみられた。とりわけ、現在「労働契約法」の制定が進行しており、先般その法案が発表されたところである。この法律は中国労働法の動向をより先鋭に描き出すものであり、本研究において有効な研究の素材となる。なお、日本においても、労働契約法の制定を提言する「今後の労働契約法制の在り方に関する研究会」報告書が発表されたところであり、労働契約法制についての比較法研究としてもタイムリーな研究成果が得られた。 本研究では、日中の共同研究・共同執筆を効果的に達成することができた。これまで、ほぼ2ヶ月に1度の研究会を実施するとともに、各年度の2回にわたる中国への出張調査を通じて、共同研究の成果を上げることができた。また、その体系をまとめ、さらに執筆分担を決定して各国レベルおよび両国共同の研究会を開催し、執筆内容を重視した研究討議を実施した。研究書の執筆は、中国の研究協力者の執筆協力を得ることにより、全体系の半分以上を完成している。
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