本年度は、パーマネンシープランニングの根底にある子どもの時間感覚を尊重した、要保護児童への永続的な家庭の保障をいかに確保するかについて、児童福祉の実施体制とそれを裏付ける法制度がどのように対応しているかの検証を試みた。その結果、児童福祉法・民法を中心にした日本の子どもをめぐる法制には、現段階ではパーマネンシーという要素が盛り込まれていないことが明らかになった。一人の子どもが何らかの理由で法的介入により保護されるケースで、そのケースの流れをたどってみると、例えば、児童福祉法33条による一時保護、子どもへの児童福祉法上の各種の措置(施設への入所措置や里親委託等)、民法上の養子縁組や親権制限制度が十分に相互の連携を考えて構築され、かつ、運用されているわけではない。また、平成16年の児童福祉法改正により導入された児童福祉司指導を拒む親に関して、児童相談所による指導に従うよう指導せよという裁判所の児童相談所に対する勧告をめぐっても児童相談所の現場では、この制度運用について試行錯誤が続いているといってよい。 そこで、今年度はドイツの少年局での要養護児童の処遇の仕方について、文献およびドイツ・デュッセルドルフの少年局での聞取り調査を行って、資料収集と分析を行った。そこでは、援助計画の立て方がすでに確立しており(法的根拠は、児童ならびに少年援助法36条に求められる)、どういう要素を考慮して当該の子どもや親を支援していかなければならないのかがはっきりとしている。この援助計画の立て方、この計画の実現・挫折に対応する法的対応についても明らかになった。今後は、これらドイツ法のシステムが日本にいかに有用性をもちうるのかを検討していくことになる。
|