本研究は、会社法の大改革期にあたって、会社財産の保護を中心とする会社法の犯罪(会社犯罪)がどのような影響を受け、今後どのようなものであるべきかについて、研究しようとするものである。具体的には、第1に、会社法は、近時、自社株式取得規制の抜本的改正や委員会等設置会社の導入など、多くの改正が行われているが、会社法の罰則規定については変更がない。したがって、これらの改正が現行の会社犯罪の解釈にどのような影響を与えるかが検討されなければならない。そのためには、従来の会社犯罪に関する判例・学説を整理することがまず前提作業として必要である。そこで、研究の初年度である本年度は、このような前提作業を行うとともに、近時の改正が従来の解釈に与える影響について検討を行った。第2に、新しい会社犯罪のあり方を考える上では、諸外国、特に、わが国の会社法に大きな影響を与えている、欧米の会社法および会社犯罪を参照することが有益であると考えられる。そこで、初年度である本年度は、主にアメリカ合衆国について、比較法的研究を行った。その際には、会社法の理解に法と経済学の知見を利用することが一般化して来ているので、この点にも留意することとした。第3に、会社財産の刑法的保護を考える上では、会社財産が危機に瀕した状態における保護も考慮に入れる必要がある。特に、近時の会社法の研究においては、通常時における会社の法律関係を規制する法を理解するためには、危機時における会社の法律関係を規制する倒産法をも視野に入れて考察する必要があるとの考えが有力になって来ている。そこで、会社に関する倒産犯罪、特に会社更生犯罪の研究も行った。
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