研究概要 |
腐敗対策に関して国際的協力関係がますます拡大されつつある。しかし、肝心な「腐敗」概念とその範囲についての共通認識・共同定義はいまだに実現されていない。例えば、2003年10,月31日に採択された「国連腐敗防止条約」においては、腐敗の一形態である賄賂に関する明白な定義を定めることができたものの、その他の腐敗の概念・範囲に関しての規定はきわめて曖昧である。そのために、条約自身は宣言的なものにとどまり、実行性が乏しい。このように、国際協力の前提である腐敗概念・定義の明確化が最も重要な課題になっている。この問題を解決するために、多くの研究機関や政府組織が努力している。その一つは2004年9月に北京で行われた第17回国際刑法大会である。当該会議で「国際経済取引における腐敗及びその他の犯罪についての決議」が採択され、国連に提出された。そのなかで、「腐敗とは、公務員はその権力または地位を利用して違法的に個人的利益を追求するような行為である」というより具体的で統一的「腐敗」概念・定義を定めるようになった。本研究の一部として、研究代表者は、この決議の起草、準備の段階からかかわりを持ち、上記のような概念・定義の策定に学術的サポートをした。それとも関係して、中国国内での「腐敗」概念・定義の中身、それが国際社会での「腐敗」概念・定義とどう違うかについても検証した。その成果を英文では発表することができた。また、中国における「腐敗」概念・定義の特殊性をより深く掘り出すために、中国で極めて「特殊」的犯罪としての意義を有する租税犯罪に関して、その政治的背景、犯罪概念と国家イデオロギーとの関係をそれぞれの社会の「文化と犯罪」との関係から分析してみた。その成果を共同著書の一部として公表することができた。
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