平成18年度は、本研究の最終年度に当たるので、研究成果を取り纏めを行う必要があるが、平成17年11月1日から公判前整理手続が実施されはじめ、全国で、300件を超える事件が、公判前整理手続に付された。しかし、公判前整理手続に付される事件数も、各地裁毎にバラツキがあり、その実務も必ずしも定着したものとは言えない。 公判前整理手続における法曹三者の中では、2009年4月からの裁判員制度の実施の準備のために、模擬裁判が行われ、それに伴い、公判前整理手続も模擬的に実施されてきた。すなわち、公判前整理手続に関しては、模擬裁判に付随して行われる模擬公判前整理手続と、実際の改正刑事訴訟法の施行に伴う実際の公判前整理手続とが併行して行われているのが現状である。 しかしながら、公判前整理手続に付される事件数の増加に伴い、刑事訴訟法改正前から議論のあった証拠開示請求に関する裁定の事例も順次蓄積されて、判例集にも登載される事件が現れてきている。それらの裁定が果たして妥当なものと言えるか否かについて、今後理論的な検証が必要となることが判明した。この裁定事例に関しては、日弁連において、判例集に未登載の事件を含めて、各地の事例を収集し、それが、各種の研究会で検討されている。 そこで、平成18年度には、日弁連が主催する研究会に参加すると共に、公判前整理手続に関する情報の収集を行った。 他方において、平成16年度はイギリス・平成17年度はイギリス・フランスの制度の調査を行ったが、平成18年度は、イギリス・ドイツの公判前整理手続に関する調査を行った(平成19年3月10日〜21日)。イギリスにおいては、交流協定締結校であるブリストル大学法学部のスタッフから情報提供を受ける他に、ブリストルの刑事法院においてリーディング・バリスターであり、現在は、カーディフ刑事法院の巡回裁判官のRoderic Denyer Q.C.及びソリシターと逢い、情報提供を受けた。また、ドイツにおいては、交流協定締結校のミュンスター大学法学部のスタッフからドイツの公判前整理手続に関する情報提供を受けた他に、裁判員制度の導入を中心に日本の司法制度改革に関して、大学スタッフに対する講演を行った。 また、公判前整理手続が実際に実施されている中で、弁護士の関心も高まってきていることから、平成19年3月21日に新潟県弁護士会において、実務研修の報告を行った。 また、平成18年度の放送大学面接授業等において、裁判員制度及びそれを成功させるための公判前整理手続の重要性について講義を行った。なお、研究成果のついては、平成19年度中に単行本として公刊する予定である。
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