1.本年度は、予防法学も含めたドイツでの生前処分・死因処分の限界を画している遺留分に関する議論を中心として研究した。ただし、その前提として、現在盛行している生前処分・死因処分についても整理・検討しておいた。 具体的には、1970年代始めから、非嫡出子の相続権の承認とともに、配偶者相続権の強化が説かれ、法定相続のあり方が議論された。ところが、その後に、高齢社会の進展と、生前処分・死因処分の増加によって、議論の中心は遺留分に移ってきた。まず、1990年の東ドイツの統合を契機とした、配偶者相続が手厚く、子の遺留分を要扶養性に依存させる東ドイツ法を参照しての議論である。さらに、最近では、遺留分の基本法適合性をめぐって論議されており、その圧巻が2002年のドイツ法曹大会での議論である。以上に関しては、後掲の論文(最近三〇年間の遺留分をめぐるドイツの法改正論議(1)(2)(3))を公刊した((4)(5完結)も脱稿済み)。 2.その他には、ドイツの相続法の代表的な教科書(ライナー・フランク「相続法」(第2版)2003年・ベック社)の翻訳を進めている。その目的は、ドイツ相続法の全体系の中での近年の遺産承継の措置の位置づけが重要だと考えるからである。 3.以上を基礎として、来年度は予防法学上の措置の検討を進めたい。現在までに相当程度の研究の進展があるのは、先取りした相続という生前の遺産の処分である。
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