1.本年度は、ドイツにおける遺留分に関する研究に続いて、ドイツの死因処分と生前処分、および、持続代理・死因代理に関する取引慣行を検討した。 まず、遺留分については、「最近30年間の遺留分をめぐるドイツの法改正論議(4)(5・完)」を公刊した。つぎに、死因処分については、障害者遺言、人的会社の後継者条項を中心に遺言自由の限界を検討した。生前処分については、配偶者間の出捐の他に、持続代理・死因代理に関する取引慣行の具体的な問題と、その必要性を明らかにした。さらに、相続の先取りについて、簡単な検討を行った(以上の業績の一部は、1月に脱稿。他の共同執筆者とともに、日本評論社より出版の予定。ただし、題名は未定)。 2.それ以外の仕事としては、ライナー・フランク「相続法(第3版)」(ベック社・2005年)の翻訳を完結した。昨年3月に第3版が出版されたため、第2版の翻訳から対象を切り替えた。ただし、単独で出版するか、他で仕事を進めていた者と共同にするかを検討中。今ひとつ、生前処分の一環である貯蓄型生命保険の検討の一環として、ヴァイヤース・ヴァント「保険契約法」(ルフターハント・2002年)を翻訳した。 3.さらに、ハンス・F・ツァハー著・新井誠編訳「ドイツ社会法の構造と展開」の序文(11頁)、および、44頁-166頁を翻訳した。以上は相続と社会法の関係の検討のための作業の一環である。 4.以上の他に、税法の側面から問題を検討するために贈与相続税法と所得税法と相続慣行の関係について検討中である。具体的には、1.で記した生前処分、特に相続の前倒しと死因処分との比較の際に、この問題は特に重要な意味を持つ。
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