1 物的条件の整備 本年度は、研究期間(3年間)の初年度であるため、研究の物的条件の整備に労力を割くことになった。すなわち、パソコン、プリンターなどを購入し、所属研究機関に所蔵されていない書籍・資料を大量に収集した。その過程で、研究補助者の援助を受けた。これらの活動において、科研費が有効に利用された。 2 研究状況 本年度は、資料の収集・整理と並行して、その消化・分析を開始するとともに、研究の構想を具体化するとの計画どおりに作業を進めた。当初からの研究目的にも記しておいたとおり、フランス契約法研究における総論レベルの研究の充実の反面、各論レベル(売買、賃貸借、とりわけ役務提供契約)の研究の不足を認識したが、さらに、総論(一般法)と各論(特別法)との関係という問題の存在を認識した。すなわち、一般法と特別法とが分離した理由、分離の意義、総論と各論との関係といった問題が存在することを知るに至った。フランスの契約法理論は、しばしば、一般法と特別法という概念を用いて議論を行っているが、それがしばしば決定的な重要性を持ち、契約法(あるいはより広く民法全体)における特徴的な「思考の形式」を構成しているとの強い感触を得ている。 3 成果公表の準備 そこで、当初の研究計画における研究成果公表時期よりも早くなるが、現在、上記のフランス契約法における一般法と特別法の関係に関する論文を執筆中であり、平成17年度に研究成果の一部を公表することとした。ひとつは、一般法と特別法の関係を中心にした契約法学の思考形式に関する論考(締め切りは平成17年4月末日、平成17年9月公刊予定(雑誌「法学」東北大学法学会)である。また、別途、役務提供契約における各論的問題をとりあげて、問題意識の精密化を試みるべく、別途短編を執筆する段取りを整えた(締め切りは平成17年7月末日、平成17年9月公刊予定。雑誌「民事研修」法務総合研究所)。
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