研究課題
基盤研究(C)
平成18年度は、前年度、前々年度の研究をふまえて、債務不履行の帰責事由という角度から、役務提供契約の構造解明を行うことを中心的な目標として研究を行った。従来の帰責事由論は、引渡債務を念頭に置いて展開してきたところ、不完全履行論・積極的債権侵害論の展開を契機として、役務提供契約の分析も進んできた。しかし、これまでの研究は、各論的であり、個別問題の解決を図るという性格が色濃いものであった。ところが、近年の帰責事由についての研究、とりわけ潮見佳男教授と森田宏樹教授のものは、総論的かつ体系的な性格を有する。本研究では、潮見・森田両教授と視点を共有しつつも、債務不履行法のみならず民法体系全体にわたる考察を行うことにより、近い将来行われる可能性の高い債権法改正論議も視野に入れた、役務提供契約の体系的分析を行っている。具体的には、役務提供契約を念頭に置くなら、帰責事由の解釈論・立法論のみならず、債務不履行の客観的要件(とりわけ不能論)、解除の要件等々について、従前の議論に再検討を要する項目が発見された。契約法ないし債権の総論レベルの解釈論・立法論を、役務提供契約をも取り込んで行うことは、容易でないということである。具体的な内容については、本年度の研究成果(後記の論文「債務不履行の帰責事由」)を参照されたい。処方箋は、今後の課題となる。さらに、検討の過程で、帰責事由論についての民法学説による説得的な提案が、とりわけ実務に必ずしも受け容れられていないという状況に直面し、学説と実務との関係、あるいは実定法学の役割について、考えさせられることになった。その検討の成果の一部が、後記の鼎談(「民法学説の役割を語る」)である。今後は、役務提供契約の構造等々契約法学の個別問題の研究を行いつつ、実定法学の意義についても研究課題として意識して勉強を進めることを考えている。
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判例タイムス 1222
ページ: 4-34
ジュリスト 1313
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民商法雑誌 134巻2号
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Hanrei-Taimusu No1222
Jurist No1313
Jurist No1318
Minsho-ho zasshi vol134,no2