本研究は、新たな倒産法制の下で、倒産手続が契約に及ぼす影響について理論的・実践的検討をすることにより、契約法学及び倒産法学に理論的・基礎的寄与をすることを目指している。 本年度(平成16年度)は、まさに新たな倒産法制の整備がなされた1年であった。すなわち、新破産法の制定、これに伴う民事再生法・会社更生法の改正があり(平成16年6月2日公布、同17年1月1日施行)、特別清算等の見直しに関する法制審議会の要綱答申があった(平成17年2月9日)。この動きの中で、本研究の第1段階として、新たな倒産法制の下での各種の契約の帰趨を中心に研究した。 第1に、賃貸借契約・請負契約・相場がある商品の取引に係る契約・継続的給付を目的とする双務契約について、新倒産法制の下での取扱いを検討した。特に、敷金のある賃貸借契約において賃貸人が破産した場合について、やや詳しい検討をした。 第2に、知的財産権のライセンス契約において、ライセンサーが倒産した場合のライセンシーの立場について検討した。これは、新破産法制定後も産業界からなお検討が求められている問題であるが、本研究においては、基礎的問題に遡って検討した上、今後の立法に当って考慮すべき点を具体的に示した。 第3に、倒産手続における双方未履行双務契約の取扱いに関する研究を進めている。これは、新倒産法制の下でも規律は変わらないが、かねてから活発な議論のある問題である。本研究では、管財人の解除権の制限法理等について、倒産法と契約法の関係という本質的問題を考慮しつつ、検討している。 16年度は、このうち第1・第2について、研究成果を公表した(ジュリスト増刊は平成17年4月発行見込み)。これらは、いわば各論的研究であるが、基礎的な問題との関連性も意識している。第3は、より基礎的な研究であり、次年度は、これを中心にしつつ、上記目標の達成に向けて研究を進める予定である。
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