本研究は、新たな倒産法制の下で、倒産手続が契約に及ぼす影響について理論的・実践的検討をすることにより、契約法学及び倒産法学に理論的・基礎的寄与をすることを目指している。 16年度は、新破産法の制定を始め新たな倒産法制が整備されたが、17年度は、個別的な整備が進んだ。即ち、1、会社法成立に伴う特別清算に関する新法制の発足、2、信託法と倒産法に関する法整備の準備、3、知的財産権のライセンシー保護法制の検討等である。また、4、抵当権設定契約に係る詐害行為取消権と否認権の異同に関する最高裁判例が現れ注目される。17年度は、このうち2〜4について研究を進めた。 2の信託法と倒産法については、「信託法・倒産法研究会」(平成17年10月〜11月)に参加し、信託財産破産に関する基本問題を検討した。その成果は、法制審議会信託法部会での審議の際に用い、また、「信託226号」(信託協会)掲載予定論文の一部に反映させた。 3の知的財産権ライセンス契約については、「知的財産の流通・流動化に係る制度的諸問題の調査研究委員会」(平成17年7月〜18年3月)に参加し、ライセンサー倒産時のライセンシー保護制度を検討した。その成果は、上記委員会報告書に盛り込まれる予定である。 4の詐害行為取消権と否認権については、新破産法の否認権制度が民法の詐害行為取消権に及ぼす影響について研究を進めている。その成果は、『倒産判例百選[第4版]』(有斐閣)及び『新破産法の理論と実務』(判例タイムズ社)に掲載予定である。 このほか、倒産手続における双方未履行双務契約についても引き続き研究を進めている。なお、平成17年5月、後記論文が予定通りジュリスト増刊号に掲載された。 以上の通り、本研究は、現実の法制度の発展と同時並行的な形で進められてきたが、17年度は研究期間の最終年度であるので、これまでの研究を総合し、成果をまとめるものである。
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