研究概要 |
民法上、子どもをめぐる紛争で親権が問題となるのは、「夫婦間の場合」と「親と第三者」の場合とがある。離婚後の子どもの親権者・監護権者決定、および面接交渉の決定においては、従来夫婦間の争いが法的中心課題となっていたが、近年では、子どもと祖父母、あるいは継親等の第三者の面接交渉に対して、親権者が争う場面が登場している。 親権者対第三者との紛争について、法的変遷を経ているアメリカでは、判例実務においては子どもの最善の利益が検討され、法的理論としては親権者の権利性が議論されている。すなわち、未婚家庭、再婚家庭の増加による伝統的なアメリカ核家族の変化、および非白人系のアフリカン系、ラテン系、インディアン系等の拡大家族の伝統の尊重という実体面から子どもの利益のため面接交渉が拡大されるべきという理論が一方に、他方には、親の権利は絶対的なものではなく、子どもの利益に必要があれば州の介入も是認されるという家族のプライバシーに対するせめぎ合いの理論が存在する。 具体的には、2000年の連邦最高裁判例Troxel v.Granville,530U.S.57(2000)において、州裁判所に親の反対をおして祖父母に面接交渉を認める裁量権を与えているワシントン州法を違憲とする判決が出され、議論が激しくなった。今日では、祖父母の面接交渉判例において申立の範囲を狭くしたり、親の反対がある場合に、子どもの最善の利益の証明責任を重くしたりする傾向が増え、家族のプライバシー重視、すなわち親の権利重視の判断が続いている。 親子法の研究においては、親子の関係のみならず、国家と家族の関係を視野に入れる必要がある。その検討の一資料として、離婚後の子どもと第三者との交流についての立法・判例は有益な示唆を与えるものであり、わが国においても、この視点を踏まえて離婚後の親子関係の法制度構築を目指すべきである。
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