主として、わが国の中小企業政策および会計政策についての調査・検討を行った。そこでは、中小企業会計基準の普及について、金融庁が行っているリレーションシップバンキング施策がその成否に大きな影響を有していることが理解できた。すなわち、一部の銀行がリレーションシップバンキングの実践として、中小企業向け無担保融資を行う際に、中小企業会計基準に沿って作成された計算書類を提出した企業に対しては金利を安くする等の政策がとられているのである。したがって、実務上、中小企業会計基準それ自体がまさに会計基準としての位置づけを得られつつあることを意味する。さらに、会社法の現代化作業に伴い、2005年度中にも成立するであろう商法改正によって、新たに会計参与という機関の新設が認められることとなった。したがって、中小企業に会計参与が設置された場合には、計算書類の作成についてこれまで以上の信頼性が要求されることになり、その核として中小企業会計基準がより精査されることとなり、中小企業にふさわしい会計基準がより高い精度で完成されることが期待される。 また、商法改正では資本金規制が撤廃されることとなり、従来にもまして起業が容易になることが予想される。特に資本金の裏付けがない会社にあっては、債権者保護のためには計算書類の公告が必要不可欠であり、インターネット公告が認められている現在にあっては、公告義務の履行は制度的にも必ず確保されなければならないと考える。加えて、計算書類の作成の際にも準拠すべき会計基準として中小企業会計基準を採用すれば、計算書類の正確性や比較可能性が飛躍的に高まると思われる。 本年度は以上のことがらについて検討し、その成果については近々公表の予定である。
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