株式投資信託による議決権行使についてアメリカと日本の状況を比較する。 第1に、株式投資信託におけるコーポレート・ガバナンスについて、アメリカにおいても日本においても株式投資信託における株主活動およびコーポレート・ガバナンスは注目されてはいなかった。しかしながら、アメリカではミューチュアル・ファンドによる議決権はアメリカ総議決権の30パーセント近くを占めいまなお増加中であり、日本でも株式投資信託への個人資金の流入が加速しその残高は45兆円を超えている。株式投資信託ファンド・マネージャーは自己の影響力を認識し、受益者の資産運用に資するように運用先のコーポレート・ガバナンスの担い手としての役割を果たすべきである。 第2に、議決権行使を開示することについて、アメリカではミューチュアル・ファンドの透明性を高め、ファンド・マネージャーに説明責任を果たさせ、ミューチュアル・ファンドの投資家にファンドのガバナンス活動を評価・監視させる効果が指摘されている。日本では、委託業者による議決権行使の実効性を高め、委託業者自身のガバナンスを受益者に開示することになる。また、委託業者のCSR履行効果や受益者の実質的株主としての自覚を促す教育効果も期待できよう。 株式投資信託による議決権行使ディスクロージャーは受託者責任の一内容を構成すると考える。したがって議決権行使結果は開示すべきである。その方法は、年金基金等機関投資家の開示方法が参考となる。個別具体的ではなく全体的にウェブ・サイトで掲載、一定期間ごとに更新すればよいのではないか。そうすることによって市井の一般投資家もアクセス可能であり、コストの問題も解決できよう。また、株式投資信託上プレイヤーは広がりを見せており、販売者と株式投資信託とのディスクロージャーに関しても注目され始めていることから販売店での開示も考えられる。
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