本研究は、銀行のコーポレート・ガバナンス、中でも株主利益最大化原則と預金者の利益保護の調整に関する問題を主な研究対象としている。研究初年度に当たる16年度は、資料の収集に当たるとともに、次のような研究を行った。 まず、旧銀行法において、銀行の組織形態として株式会社であることが求められるに至った根拠について、立法趣旨に遡って研究した。さらに、銀行法上、銀行株式会社の株主権がどのように取り扱われているのかについて研究した。そして、以上の研究結果を2004年12月に論文として公表した。 次に、株主と預金者との利害の調整に当たるべき銀行取締役の負う善管注意義務の内容を具体的に明らかにすることを目的として、整理回収機構が遂行している破綻金融機関の役員に対する責任追及訴訟および銀行の株主による融資の貸倒に起因する株主代表訴訟に関する判例を対象として、特徴ある判旨を抽出し、株主と預金者との利害が対立する融資業務について、融資決裁における銀行取締役の注意義務に関するわが国判例の到達点を探るべく研究を行った。さらに、銀行法の条文を分析することによって、銀行法を遵守すべき銀行取締役の善管注意義務の内容を銀行法の側面から研究した。以上の研究結果については、論文として2005年3月に脱稿しており、2005年6月の公刊に向けて発表の準備作業を進めている。 また、17年度に行う本研究のとりまとめに関する論文の構想の立案作業を並行して進め、おおまかな骨組みについて立案を終えた。
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