今年度特筆すべきことは、台湾民法の改正なり、現在の解釈論を知ることができたことである。そこから、日本法を考えるさいに、多くの示唆を得られた。詳細は、冊子体の報告書でおこなう。2006年12月21日、「ミニシンポジウム・履行障害法の再構成をめざして」(日中韓台湾の民法の比較)を学習院大学西2号館5-3室で5時間にわたっておこなったさい、台湾民法については、東呉大学の孫森〓教授、台湾大学の朱柏松教授に報告をお願いした。以下では、瑕疵ある物の給付の場合の売主の責任について、台湾民法から示唆を受けた点についてまとめておきたい。 1990年代の民法改正により、買主の代金減額権・解除権の除斥期間について、「物の引き渡し時から5年間経過したときに消滅する」という一文が付加された。それまでは、買主が瑕疵を通知してから6ヶ月で担保責任は消滅するとなっていたが、瑕疵を発見できない場合についての規定がはっきりしなかった。それが今回の改正で一応解決された。つぎに、台湾民法では、種類売買の場合には追完請求権の一環として代物請求権がすでに認められているが(364条)、その期間制限については明文の定めがなく、学説上争いがある。その中で、瑕疵担保責任の期間制限の規定(365条)の類推適用という見解があることは注目に値する(一般の消滅時効=15年[125条]は長すぎるし、売主が無過失でも避けられない瑕疵担保責任について過失を前提とした一般消滅時効法を適用するのは、法政策的にも疑問である)。さらに、最高法院中華民国77年度第7回民事法廷会議決議によると、「瑕疵が契約成立後に初めて存在し、かつ売主の責めに帰すべき事由により生じた場合」という限定つきながら、売主の不完全履行責任として(1999年に改正された227条)瑕疵修補義務が認められる、という。これらを挺子として、台湾民法において、瑕疵ある物の給付の場合の売主の責任を債務不履行責任としてとらえることはもう一歩であろう。
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