本年度は、課題に関連する未収集のまたは新たな資料を集めることのほか、平成17年成立が予定されている商法改正(会社法制の現代化)案における「資本の部」に関連する改正提案を詳細に検討することに集中した。要綱試案公表後に早稲田大学教授意見・産業経理協会意見の作成に関与し、またパブリックコメント集計後においてはその内容や、会社法部会における審議状況を可能な限りでフォローし、検討を加えた。特に、最低資本金制度の廃止については資本機能の分析を通じて、また新たな剰余金の分配規制については企業会計原則にいう剰余金区分原則の法的意義という観点から検討を重ねている。公表された成果ではないが、日本税理士会連合会の研究会において会計参与に関する研究を行った。他方、比較法的研究として、ヨーロッパで進行中の第2号指令の改正(SLIM)についてもその調査を継続した。特に、本年度はヨーロッパにおいてアクション・プランが公表されるなど、具体的な進展がみられたことから、これらに関連する資料の蒐集に努めた。以上の調査・研究の成果の一部は、早稲田大学COE<企業法制と法創造>総合研究所の研究グループの一つである「企業活動の変容に対応する会計・ディスクロージャー制度のあり方」(加古宣士早稲田大学商学部教授・川村義則同助教授代表)が中心となって進めたシンポジウム「資本制度の変容と展望」での報告「わが国の株式会社法における『資本』制度-過去、現在、そして未来?-」及び同研究所紀要である企業と法創造第3号における論文「わが国の株式会社法における『資本』制度-過去、現在、そして未来?-」において発表した。また「資本の部」の法改正に関連して、株主持分変動計算書に関する論稿も雑誌論文として発表する予定である。
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