平成18年施行の会社法においても、会社組織再編は会社法に固有の重要課題として重視されるが、同時に、これは商法固有の問題に留まらず、税法や企業会計との関係で統一的に考察されるべき課題である。このような問題意識をもって、「税法と会社法の連携」の視点から、私は長期にわたって、この課題を追究してきた。商法専攻者として、専門外の税法上の諸課題を自らの問題として捉え、税法専攻の研究者のみならず、税理士をはじめとする税法の実務専門家との意見交換にも、多大の労力を費やした。その結果、企業税務および企業会計上の諸問題が浮かび上がり、今後にも繋がる基礎資料を得ることができた。 さらに本研究では、会社法において創設された「合同会社」という新しい会社類型の登場を受けて、会社法上の課題と税法上の課題という両側面から、この新制度の意義を多角的に研究するとともに、従来から継続してきた「税法と会社法の連携」の総合的研究をさらに押し進めることができた。その成果として、論文(「合同会社創設の意義と問題点-商法と税法の接点」)の発表および著書(単著『中小企業の会社法・実践講義』および共編著『税法と会社法の連携』)を刊行することができた。とくに、論文における研究課題は、現時点では商法あるいは税法の研究者から、それぞれの専門分野にたつ研究が個別に公表される段階に留まっており、両法分野を統一的かつ総合的に分析した研究成果は、ほとんど見られない状況にある。その意味でも、会社の組織再編全体にわたる会社法・税法の接点に関わる研究を進めてきた意義は大きいと思われる。 今後の新たな課題としては、これらの研究成果を基に、新しい会社形態である合同会社をめぐって、これを法務・税務・会計に関する総合的研究に発展させたいと、具体的に計画している。
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