1 総則的課題の検討 家事審判の甲類事項は全体で40種類以上に及ぶ。そのうちには、申立件数のきわめて多い子の氏の変更や相続放棄の申述から、すでに歴史的使命を終えたと思われる事件まで多様である。さらにその内容を分類しても、職権性の極めて強いものから、実質的に当事者間での協議によって決定できそうな事件まで含まれ、裁判所の審理も実質的になされなければならないものと、ほとんど審理をしないものもある。こうした中で、それぞれの事件の審理上で問題となる手続の共通点の研究が、第1グループに掲げられる。 この分野では、当事者適格、手続能力、手続の受継および参加等の点について、新たな知見を得ることができた。とりわけ参加については、従来ほとんど立ち入った研究なしに、家事審判手続においても当事者参加と補助参加があると指摘されていたが、それが根本的に誤っていることを明らかにできたのは、大きな成果であろうと思われるし、手続の受継についてもこれまでの通説には大きな問題点があることが確認できている。 2 各事件の特殊性 甲類事件の多様性を考慮して、従来の先例や学説の適否を立ち入って研究史、その問題点と解決への方向性を示すことも重要である。とりわけ家事審判は、純粋に手続法的な観点だけで処理することができず、問題となる実体法(民法)の解釈と密接な関係を無視することができない。こうした点から、まず代表的な事件を取り上げて研究せざるを得ない。成年後見事件については、すでに研究成果を本研究に先立って公表しているので、本年度は、相続放棄申述をとりあげ、これまでの先例・判例や学説の変遷を明らかにしたうえ、最近の学説が指摘する内容は適当とは言えず、むしろ昭和20年代から30年代にかけて主張されていた立場こそが適切であるとの結論を得た。
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