研究概要 |
1 家事審判法における基礎的な手続構造の問題点の分析 この点については,昨年度に引き続き,(1)家事審判手続における保全処分の位置づけに関する現行法の問題点の検討,とくに本案に対する附従性の廃止の検討,(2)家事審判に対する不服申立てを許さないとされている審判について,その理由と問題点の分析,ドイツの非訟事件手続法における不服申立て制度との比較,(3)証拠調べ,とくに自由な証明と厳格な証明手続の限界について,文書提出命令の可否に即しての検討,(4)手続の終了または受継の可否についての検討,および(5)家事審判手続における参加のあり方についての検討を,併行して行ってきた。 2 また2006年6月には,ドイツ連邦司法省から約30年ぶりに非訟事件手続法の全面改正を視野においた,参事官草案がその理由とともに公表された(FamFG)。これはA4版で約530頁にものぼる大部なものである。これは,本件の研究内容とも密接な関係を有するため,夏以降その翻訳をすすめ,理由書の内容をこれまでのドイツの学説・判例との対照,わが国の現行法,学説との対比をしている。これによって,わが国の通説の理解が,ドイツ法の現行法および改正草案との関係でどのような位置づけを得られるかが可視的になる。ただこの作業の結果,上記1に述べたこれまでの研究成果を論文や資料という形で公表することが遅れている。 3 他の研究グループとの協働 2006年1月には,他の科研費グループと協働して,家事事件の解決につき,日本・韓国・中国の研究者とともに家事事件手続法の比較,家事債務の執行制度についての共同研究会を開催し,また2月には,オーストラリア家庭裁判所において,子の面接交渉・引渡しの強制執行について詳細な情報を得ることができた。
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