1.日本法に関する研究 (1)日本法の現状を確認するために、これまで収集したパブリシティ関連の裁判例を網羅的に整理するとともに、競走馬の馬名についてのパブリシティの権利に関する最高裁判決(最判平成16年2月13日)について検討を行なった。この事件を検討した文献も含め、学説の整理・検討を行なった(最高裁判決に関する検討成果の一部は近日中の公表を予定している)。 (2)本研究では、標識法とパブリシティの権利との関係を探ることを目的の一つとしているが、この点に関し、本年度は、以下のような研究を行なった。スナックシャネル事件最高裁判決(平成10年9月10日)にみられるような、混同防止規定(不正競争防止法2条1項1号)における混同概念の拡張傾向を確認した上で、アメリカ法の標識法の動向の分析も踏まえつつ、表示の宣伝広告力の保護という側面において、混同防止規定と、平成5年改正で新設された著名表示保護規定(同法2条1項2号)との役割分担がどのようになされるべきかを考察した。 (3)インターネット上でパブリシティの権利の侵害がなされた場合のプロバイダの責任について、プロバイダの責任制限法の分析及び判例の検討を行なって考察した。 2.比較法研究 (1)比較法の基礎とするために、母法であるとされる米国のパブリシティの権利の現状について整理するとともに、上記1.(2)で触れたように標識法の分析も行なった。 (2)これまで諸文献で紹介されてきた米国・ドイツに加え、ドイツともアメリカとも異なる対応をとる、英国及びオーストラリアの現状について調査を行なった。
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