研究の1年目である本年は過去に集積した資料の再整理、新規資料の収集および2年目以降に行う3つのテーマ((1)知的財産のライセンス時における競争法(独禁法)による規整、(2)知的財産法に係る権利濫用論の再検討、(3)知的財産訴訟における独禁法違反の主張)を効率よく遂行できるよう、問題点の整理を主として行った。 再整理および新規に収集した資料の種類は知的財産法および競争法の領域を中心とした審決・判決例、論文、雑誌、図書、研究会の配布資料や報告書、立法などである。収集のために、東京および関西を中心に、大学附属図書館、公正取引委員会事務総局、(財)ソフトウェア情報センター、(社)著作権情報センター、関西特許情報センター等に赴いた。また、本研究に関連する競争法および知的財産法の分野における知識の習得や議論の一般的状況の把握、新たな問題点の発見といったことを目的に、(1)独禁法審判決例研究会(主催:(財)比較法研究センター)、(2)関西経済法研究会(主催:公取委近畿事務所)、(3)四国経済法研究会(主催:公取委四国支所)などの研究会に参加した。 本年度の成果の一部として「米国特許制度と競争政策」を公表した(11.研究発表参照)。本稿は米国の競争政策当局の1つである連邦取引委員会(FTC)が2003年10月28日に公表した、「技術革新(イノベーション)促進のために--競争と特許法および特許政策との適切なバランス」と名付けられた報告書を紹介・検討したものである。本稿において、FTCが現行の特許制度に対して行った10の提言((1)特許付与後における当該特許の見直しおよび異議申立に関する新しい手続の創設、(2)特許の有効性の判断を「証拠の優越」の原則に基づいて決定することを明示する条文の創設、(3)「自明であること」を評価するための法的基準の厳格化、(4)特許商標庁への充分な資金の供給など)、について明らかした。
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