研究課題
基盤研究(C)
1)本年度は、研究課題のうち、特に「知的財産権のライセンスに対する競争法上の評価」に焦点を当てて研究を行った。このテーマ選択は、知的財産の積極的な活用方法の1つとしてライセンスが挙げられるところ、それに付随する独占あるいはイノベーション阻害という問題に対処する手立てとして、競争政策からの規律が重要であるとの認識から出発している。本テーマの意義は、「知的財産基本計画2006」(知的財産戦略本部・2006年6月8日)において、現行の「特許・ノウハウガイドライン」(公取委事務総局)の改定が2006年度中の重点施策の1つとして挙げられていることからも判る。2)今年度の具体的成果の1つとして、「特許ライセンス契約における不争義務と独占禁止法」を『知財年報2006』別冊NBL116号239頁以下に発表した。本稿は、特許ライセンス契約等に含まれる不争条項の評価を競争法の観点から行ったものであり、日米欧いずれの国・地域においても、一定の場合には同条項が競争法違反になる可能性を指摘している。3)また、椙山=高林=小川=平嶋編『ライセンス契約』(日本評論社)Section2において、「ライセンス契約と競争法」を執筆担当し、公表した。そこでは、日本、米国およびEUの各競争政策当局が知的財産権のライセンス契約に対してどのような法運用を行っているかを明らかにしている。4)今年度は本研究の最終年度に当たる。本年度の重点テーマである「ライセンスと競争法」、そして、昨年度のそれであった「知的財産権の濫用法理と競争法」いずれの分析・検討を通じても、本研究課題の重要性が実証されたと思われる。今後は、近く公表予定の改定ガイドラインの検討や、本研究計画の柱の1つとして当初予定していたものの、結果的に充分な検討が行えなかった「知的財産権訴訟における独禁法違反の主張」といったテーマを取り込んだ上で、本研究を応用・発展させた形での更なる研究が必要であろう。
すべて 2007 2006 2005
すべて 雑誌論文 (3件) 図書 (2件)
別冊NBL(知財年報2006) 116号
ページ: 239-254
Additional NBL (IP Annual Report 2006) No.116
Recent Aspects of the Competition Law ( 2 ) (Publication of Articles in commemoration of the 70th Birthday Professor Joji ATSUYA)
ページ: 853-883