研究概要 |
精神医療・終末期医療・子どもの医療における家族による代行決定に関する日米の判例・学説を調査・収集した。アメリカ法については,3月に東京大学大学院法学政治学研究科付属外国法文献センターにおいてさらに詳細な調査・収集を行った。現在,慎重に比較法的な検討を行っており,来年度に一定の成果を得る予定である。 当初の予定ではさほど重きを置いていなかったが,本研究テーマの基盤たる自己決定権の意義とその限界について考察した。1980年代以降無数に生まれているわが国における同権利に関する論稿を網羅的に分析する作業を現在行っている。当初は自己決定権の「光」の部分のみが強調される傾向にあったが,近年,特に医療・福祉の文脈において,その「影」の部分が指摘されることが少なくない。医療・福祉の患者・利用者に自立・自己決定を強いることで問題は解決されるのか。だからといって家族の代行決定に安易に頼ることが正当化されるわけではないものの,家族の適正な役割を探る本研究にとって,自己決定権論の光と影を見据えることの重要性が明らかにされた。 さらに,来年度に計画している医療機関対象の調査の予備調査として,3月に日本におけるホスピスケアの先駆者である聖隷三方原病院を訪問し,医師・看護師計6名から聞取調査を行った。終末期医療という極限状況の中で,患者の医療決定がいかになされ,家族はどのような役割を果たしているのか。医療従事者はそれをどのように受け止めているのかが事例を踏まえて明らかにされた。
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