研究課題
基盤研究(C)
本研究の目的は、近代イギリスにおいて政党の概念が歴史的にどのように生成し、いかなる意味を付与され、どのような変容を遂げながら政党政治の成立に寄与したかを、17、18世紀の政治家、政治思想家、パンフレット作家たちの言説を取り上げて、それぞれの時代の歴史的コンテクストを重視しつつ政治思想史的に解明することである。まずはじめに政党論史を概観した。次いで、17世紀末から18世紀初頭にかけての政党概念を、自ら日和見主義者であることを誇ったハリファクスと諷刺作家であるスウィフトを中心に考察した。彼らは党派に深く関わっていたにもかかわらず、ともに政党に不信感や嫌悪感を抱いていた。彼らにとって政党は、本質的に政治的悪をはらみ、ひたすら私的利益を追い求める原理なき徒党と何ら変わるものではなかった。だが、こうした政党概念はしだいに変容する。私はボリングブルックに着目し、ウォルポールとの政治的抗争のなかで展開された彼の政党論を分析した。ボリングブルックにおいて政党は、徒党と明確に区別されうるものであり、とりわけ反対党は自由な統治に欠き得ぬものであった。しかし彼が理想とした政党は、結局のところ、あらゆる政党を終焉させるための非政党的政党であり、彼の目標とした政治も、政党を不要とする非政党的政治であった。最後に、エドマンド・バークの政党概念を考察した。バークにおいてその概念は大きく変容し、ハリファクスやスウィフトはもとより、ボリングブルックやピットたちとも異なって、政党が政治的効用の観点のみならず、倫理的観点からも不可欠なものとして捉えられた。そして彼の政党論は政党政治や二党制もしくは多党制といった内容を含み、近代政党論の先駆けとなるものであったことが明らかとなった。
すべて 2007 2006
すべて 雑誌論文 (6件)
岡山大学法学会雑誌 56巻2号
ページ: 19-51
岡山大学法学会雑誌 57巻1号
ページ: 1-19
Okayama Law Journal vol. 56, no. 2
Okayama Law Journal vol. 57, no. 1
岡山大学法学会雑誌 56巻1号
ページ: 1-32
Okayama Law Journal vol. 56, no. 1