本研究では、戦後ドイツ創設期における連邦制の形成過程を明らかにするため、「財政連邦制の形成」と「連邦参議院の成立」という二つの研究課題を追究し、論文を完成させることを目標とした。 「財政連邦制の形成」に関しては、科学研究費申請後の作業が著しくはかどった結果、2004年3月までに論文の発表が可能になった。この研究によって、財政連邦問題が戦後ドイツの政治的枠組みをなす基本法の審議過程における最大争点であったこと、財政連邦制をめぐっては単一型連邦制と州優位型連邦制の激しい対抗が存在したこと、占領軍政府の関与が基本法に関わる他の問題に比して最も顕著であったことが明らかになった。 本年度は、「連邦参議院の成立」を解明する作業に取り組み、まずドイツの連邦議会文書館、社会民主党文書館、キリスト教民主同盟文書館、アデナウアー文書館で資料収集を行った。これらの資料やヘレンキムゼー憲法会議および議会評議会の議事録を用いて2005年3月15日に論文を完成させた。この論文は目下印刷中であり、2005年6月に名古屋大学法政論集に発表される予定である。こうした研究を通じて、連邦参議院の成立過程では第二院をめぐって上院方式と連邦参議院方式の対立があったこと、官僚観や政党観の対立がこの問題に深く絡んでいたこと、連邦参議院方式が成立するにあたっては、フランクフルト憲法(1849年9)、ドイツ第二帝制(1871-1918年)、ワイマール共和制(1919-1933年)の連邦制という歴史的経路依存が決定的な規定要因になったこと、第二院をめぐる政党間の対立がバイエルン州の関与によって妥協に転じたこと、占領軍政府の介入が財政連邦制とは違って審議を左右するほどではなかったことが明確になった。
|