1.本研究の狙いは、戦後ドイツの連邦制の成立過程を明らかにすることにある。この問題を究明するために、一方における連邦と州の垂直的関係、他方における州と州の水平的関係の複合体として連邦制構造を捉え、州首相、政党、占領軍政府といったアクターに注目し、戦後連邦体制をめぐる選択肢の対抗・妥協関係を探るという視点を設けた。この観点から私はすでに4本の論文を公刊しているが、本研究期間においては、(1)「連邦参議院の成立過程」と(2)「戦後連邦制構想をめぐる言説状況」の2点を追究した。こうした研究に必要な一次資料は、平成16年8月に連邦議会文書館、社会民主党文書館、キリスト教民主同盟文書館、アデナウアー文書館で収集した。 2.(1)に関する研究成果は、論文「戦後ドイツ連邦参議院の成立」に結実した。これは、戦後連邦制の経路依存性という視点を手がかりに、フランクフルと憲法、第二帝制、ワイマール共和制における連邦制と連邦代表制を概観した後、戦後基本法制定期の政党(社会民主党、キリスト教民主同盟、キリスト教社会同盟、自由民主党)の連邦制論と第二院論を検討することによって、連邦制をめぐる対抗的選択肢を明らかにした。これを通じて、連邦参議院というドイツに固有な連邦制的代表制が形成されるに至った理由を歴史的状況、戦後時代状況、官僚制論、政党論との関わりで解明した。 3.この論文を完成させた後、(2)の研究に移った。その際、戦後連邦制の枠組みを審議した議会評議会議長アデナウアーの民主主義論と連邦制論、社会民主党のシューマッハーやカルロ・シュミットなどの連邦制論、アメリカ占領軍政長官クレイのドイツ論と連邦制論、そして戦後直後の論壇における連邦制論を検討した。今後は、「戦後ドイツ連邦制形成をめぐる言説状況」に関する論文をまとめる計画である。
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