本年度は(1)都市部における介護ソーシャルエンタープライズへのヒアリング調査、(2)これまでの研究調査のまとめ、を行った。 (1)スウェーデンの都市部における介護ソーシャルエンタープライズへのヒアリング調査 申請者はスウェーデンの介護サービス供給の多元化の事例として、2002年にスウェーデンの過疎地における介護ソーシャルエンタープライズへのヒアリング調査を実施した。今回は都市部の事業者3件、「ラルラローセン・グループホーム(テービュ、職員協同組合)」「ヘムスチュルカン・ホームヘルプサービス(ストックホルム、職員協同組合)」「シリア人会・デイサービスセンター(ストックホルム、理念団体)」へのヒアリング調査を実施した(2005年5月)。 過疎地では地域振興策として介護ソーシャルエンタープライズが注目されているのに対して、都市部では介護事業の民営化の影響により発生したものが多く、両者の設立目的の違いが明らかになった。また都市部の介護ソーシャルエンタープライズも介護サービス供給だけでなく、社会的排除への対応など、複数の社会的貢献を果たしていることが明らかとなった。調査内容は2006年6月に予定される日本地域福祉学会研究大会で発表し、その後、論文にまとめる予定である。 (2)研究調査のまとめ 特に日本比較政治学会第8回研究大会(平成17年6月25日名古屋大学)で発表した「社民主義レジームにおける介護サービス供給多元化に関する一考察-スウェーデンの高齢者介護とコミューンの新たな役割-」は本研究調査の集大成である。発表では、スウェーデンにおける介護サービス供給の多元化の状況を整理分析し、福祉国家レジームの「収歛」現象であることを指摘した。その一方で、基礎自治体による強力な質の管理、政府による自治体格差の是正、また労働組合を通じた公民の介護労働者の連帯をあげ、これを社民主義福祉国家レジームの「分岐」現象であることを指摘した。発表の後、複数の重要なコメントを受け、現在はこのコメントを反映させて、論文の完成を目指すところである。これは筆者の博士論文の一部になる。 またその他にも、本研究の成果として、関連の論文を3本執筆した。
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