研究課題
基盤研究(C)
フィンランドは1990年代の地方分権の徹底の上に立って、自治体の組合・連合組織を多様に発展させている国であり、町村合併にも柔軟な対応がとられている。特に法律によってすべての自治体がいずれかの自治体組合に参加する、医療、福祉、地域開発分野の自治体組合が果たす役割は大きく、そのほかの事務については自治体には、単独、委託、他の自治体と自治体組合を組むなどの多様な選択肢が法律によって保障されおり、サービス供給が効率的に行われている。しかしながら、加速する高齢社会、グロバライゼーションによる国際競争のもたらす問題を乗り切ることのできる地方を構築するためには、自治体区域を大きくすることが前提であるという議論がフィンランドにおいても強まっている。そのために政府は、過疎化が進み開発の遅れている東北地方に特区を設け、2003年からの準備期間も含めて10年のプロジェクトで合併へのソフトランディングを目指し、住民の直接選挙による議会を持ち、法制定の自治体組合を傘下に置く連合自治体を設置した。プロジェクトは9自治体の参加をもって2005年1月に開始され、現在のところ予算縮小の成果が出ている。他方、政府は2005年9月に三つの自治体改革案を提示した。それらは連合自治体モデル、サービス地域モデル、圏域自治体モデルである。いずれの案も広域の連合をつくりサービスを強化する案であるが、現在その議論は進行中であり、政党間のみならず、政府内でも意見の一致はみられていない。2006年4月の世論調査によれば、国民の過半数は公的サービスを維持するには合併よりも自治体間協力または民間委託のほうが望ましいと考えているが明らかとなっている。政府はこの秋に方向を示したいとしているが、現在のところ結果の見通しは不明である。筆者は議論の経過を見守り、研究を続行する予定である。
すべて 2006 2005
すべて 雑誌論文 (5件) 図書 (1件)
in KANBARA, Masaru (ed.)Seeking for the possibilities for municipal cooperation (Rengojichi no kanosei wo motomete), 66-79, Kojinnotomo-sha 31.3
フロンティア180 52
ページ: 2-13
フロンティア180 54
ページ: 8-17
Frontier 180 Vol.52