研究概要 |
本研究の目的はこれまでの国際政治学史の研究においてまだ用いられていない新しい視角、すなわち経済外交という視点を用い、戦後の日本・台湾・中国大陸間のトライアングル関係における政府と民間(企業)、政界と財界のそれぞれの思想と行動、政治とビジネスの相互作用を綿密に考察することにある。初年度の平成16年度においては、計画通り日本国内における台湾系企業と東亜経済人会議日本委員会などへの調査を実施し、外務省の元アジア局長・中国課長・財団法人交流協会の役員、中国外交部の元日本課長等へのインタビューも実施した。2005年2〜3,月、中国大陸と台湾が分断されて以来56年目にして、初めてのチャーター便の相互直航が実現され、「反国家分裂法」も台湾側の反発を受けながら全人代で成立された。研究代表者はこのような新しい事態に直面して、2年目の研究計画にあった現地調査を急遽繰り上げて実施した(初年度調査の一部は2年目へ変更)。現地調査において、上記の新しい政治的な動きは日台経済関係の発展、台湾一福建一沖縄という小経済圏の形成に力を入れている石垣市・アモイ市・福州市のビジネス界にどのような影響を与えられるのかに重点を置き、石垣市企画開発部、同市商工会、福建省に進出している日系企業、台湾系企業(台商)の人々、さらに現地台湾事務所の責任者から貴重な意見を聴いた。2001年に初めて実現された金門・馬祖と中国大陸(特にアモイ経済特区)間の「小三通」(直接の通信・通商・通航)の実態なども「大嶝対台小額商品交易市場」への訪問を通して正確に把握できた。なお、こうした調査に基づいて発表した研究成果は、主に単著『「日中平和友好条約」交渉の政治過程』(御茶の水書房、2005年2月刊行)、論文「戦後における日台非公式外交チャンネルの形成と転換」(国際シンポジウム"20世紀の中国"にて報告、2004年8月)、論文「新思考を求めて:グローバル時代の台湾海峡両岸関係」(『国際学レヴェー』第17号、2005年3月刊)のなかで反映されている。
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