研究概要 |
本研究は経済外交の視点から戦後の日本・台湾・中国大陸間のトライアングル関係における政府と企業、政界と財界のそれぞれの理念と行動、政治とビジネスの相互作用を綿密に考察することにしている。ここの台湾とは1971年まで国連に認められ、それ以降認められていない中華民国政府が実効支配している台湾島を中心とする地域である。本プロジェクトは一次史料の調査と、それに基づく研究の蓄積を基軸とする学術活動を行った。 1.史料の蒐集について外務省・外交部の元外交官、日台ビジネス業界の担当者等へのインタビューを通して、余り知られていない日台経済外交の幾つかの真実を正確に把握することができた。台湾-福建-沖縄という小経済圏の形成に力を入れている石垣・アモイ・高雄では、台湾海峡両岸の経済交流の実情・日台文化交渉の実情及び日系企業との関りについて、現地の担当者から貴重な意見を聴き、「小三通」実施の実態も確かめることができた。台北と北京の調査では、台湾の地位や中台関係の調停に意欲を示した日本政府の動き等について、極めて貴重な外交文書も収集した。 2.上記の聞き取り調査と実地調査に基づいて蒋介石・蒋経国時代、即ち「一つの中国」の理念を堅持した時代の日台関係の実証的研究を進め、その成果を雑誌・論文集・国際シンポジウム等で積極的に発表している。『「日中平和友好条約」交渉の政治過程』、「新思考を求めて:グローバル時代の台湾海峡両岸関係」、"Social Identity, United Nations Centralism, and Japanese Foreign Policy : in the case of One China Policy and the lssue of Taiwan"等はそれにあたる。今後は収集した史料を精査し、日中関係史研究の蓄積を踏まえ、日台経済外交研究の手薄部分を少しでも充実させることのできる学術成果を世に出したい。
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