本研究課題の目的は、現代日本における市民の政治参加の変容をミクロ・レベルで分析することである。今年度は、本課題に則して2つの研究をおこなった。研究の中心は日本における政治参加構造の変動であり、日本人の政治参加は2極分化してきていると考えられる。即ち、多様な複数の参加を行う市民と、選挙でさえ棄権し何も参加活動をしない市民の2つの層が拡大している。こうした状況を鑑みて、本研究はその2極構造の両端に焦点を当てておこなった。 1つは、市民のボランタリー・セクターにおける活動である。これまでの政治参加(投票、選挙運動、市民・住民運動、誓願・陳情)を調査すると同時に、ボランタリー・セクターへの市民参加も包含されることを計量分析により示した。ボランタリー・セクターの活動の多くは、これまでの市民運動や社会運動の多くと連関している。しかし、その内容は大きく異なり、ボランタリーセクターの活動は行政との信頼関係を基底としたコラボレーションであることを検証した。 平成17年2月には、愛知県内の有権者を対象とした調査を実施した。調査は名古屋市、豊橋市、津島市、鳳来町の有権者2400名を対象として、平成17年2月に郵送調査で行った。調査目的はボランタリーセクターへの市民の参加と既存の政治参加への参加を多様な理論的分析枠組みからの比較検討が可能なデータを作成することである。調査項目には、ボランタリーセクターへの参加とソーシャルキャピタルの関連を測定する調査項目も付加した。本研究の実績としては、「ボランティア・NPOへの参加-新たな政治文化の創造か?-」(慶應義塾大学21世紀COEプログラム 多文化社会における市民意識の動態・現代日本市民意識セッション1)で報告した。 もう1つの研究は、日本の衆議院選挙における投票率低下の分析である。この研究は既存のサーベイデータとアグリゲートデータを組み合わせて、シミュレーションにより1990年代の投票率の急激な低下の原因を分析した。この研究に関しては「投票参加の低下-90年代の投票率低下の説明-」として日本政治研究学会(於:東京大学)で報告した。
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