本研究の目的は、有権者を取り巻く社会や環境が如何に影響を及ぼし、有権者の意識と行動を変容させるのかを検証することである。代表者は、そのために平成17年に愛知県内の有権者2000名を対象とした郵送調査を行った。本研究は、このサーベイ・データと既存のサーベイ・データを用いて、有権者の動態を捉えることを目的とする。最終年度は、次の2点に絞って研究を進めた。 第1点は、「ソーシャル・キャピタルの機能」である。具体的には次の2項目である。第1にボランタリー・セクターの政治的機能としてのアドヴォカシーを検証した。第2は、ソーシャル・キャピタルにおける負の側面に焦点を当てた分析を行った。ソーシャル・キャピタルは、諸組織で各組織が水平的構造を有する際に、民主主義に資するとされる。だが、水平的組織構造を有していると考えられる組織でさえ、時としては民主主義に対してネガティブな影響を及ぼすことを「選挙動員」の視座から検証した。 第2点は「政治参加の変容」である。政治参加として「投票参加」「市民・住民運動」の2つを検証した。第1に、「投票参加」に関しては、90年代の衆議院選挙投票率低下をサーベイ・データでシミュレーションを用いて検証した。結果は、有権者の政治関心と政党支持低下が投票率低下の直接的原因であり、その遠因として90年代の混乱した政党政治の存在を指摘した。さらに、コーホート効果を取り入れた分析モデルを構築し、世代交代要因の存在を検証した。この研究成果は、2005年度日本政治学会で報告した。第2に「市民・住民運動」は、イベント分析により分析した。結果は、70年代から80年代にかけて「新しい社会運動」の傾向が見えてくるが、90年代初頭はその傾向が見え難くなり、90年代後半から再度「新しい社会運動」の傾向を強めていることが検証された。本研究課題の成果は平成18年度に学術書として刊行予定である。
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