研究代表者は、既刊の『草創期のアメリカ政治学』(ミネルヴァ書房、'2002年)'の成果を踏まえ、これに続く局面をアメリカ政治学の「形成期」とし、ほぼ、「アメリカ政治学会(APSA)」の創立(1903年)から第一次世界大戦の終了期までのアメリカ政治学の生成と展開を個別研究者にそくして分析することで、この局面のアメリカ政治学の内実と特徴を明らがにすることを課題とした。 この研究視点から、この局面の政治学において「草創期」のドイツの国家・国法学的政治学からの視座転換が起こったとみなし、その内実を政治過程論、科学主義的方法論、行政改革論に設定した。この視点から利益集団政治論、心理学的政治学、行政学の生成にアプローチを試みた。この研究において、とりわけ注目したことはぐアメリカ政治学がイギリスを中心とした「多元主義国家論」とも呼応しつつ、社会中心的・過程論的政治学へと転換したことであり、アメリカの政府と政治社会の動態分析が急がれるなかで、アメリカ政治学はその多元主義的特徴を確認するとともに、規範的には現実政治の改革や民主政の強化を志向したことである。 こうして、アメリカ政治学の視座転換は緒につき、多元主義的政治認識と結びつくことで、浮上しつつあった「自由主義」の概念と接合し、「形成期」に続く20年から第二次世界大戦の終了期までの「展開期」において定着しだす多元主義的「自由民主政」論の基礎が設定されることになった。 本研究は、こうした「形成期」のアメリカ政治学の「アメリカ化」の内実の知的脈絡を辿ることで、「多元主義」政治学の生成過程を明らかにした。また、この局面は「革新主義」期ども呼ばれているように、前世紀までのアメリカの統治機構の再編や新しい統合の理念が展開されることになったことも確認した。 以上の成果をえたとはいえ、行政学や国際政治学のレベルで深めるべき論点を残しているので、今後は、この作業を進め、その成果を公表するとともに、「展開期」アメリカ政治学の研究に継承することを予定している。
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