平成16年度は、まず、主として、前年度までに米国国立公文書館などで収集した1970年〜73年の米国国務省などの外交文書に関する調査と、平成16年9月と平成17年3月に実施した韓国外交安保研究院における1974年までの韓国政府外交文書関する調査を並行して行った。そして、1970年代初頭の米中接近などに代表される北東アジア国際秩序の変容が朝鮮半島に対してどのような影響を及ぼしたのかを、特に南北対話の進展とその挫折、さらに米韓関係の構造的変容に焦点を当てて、米韓両国の一次史料を駆使して実証的に明らかにした。このテーマに関しては、「韓国外交のダイナミズム:特に一九七〇年代初頭の変化を中心に」という論文を完成した。 次に、平成16年度は、日韓国交正常化交渉40周年を迎える節目の年だけでなく、韓流ブームが日本社会を席巻すると共に、年度末には、領土問題が日韓関係を険悪にしたように、日韓関係に関しては非常に激動の1年であった。こうした日韓関係を、単なる日韓の2国間関係としてではなく、北東アジア国際秩序と関連付けて、その構造的変容を分析するとともに、今後の北東アジア国際秩序の主導的な担い手として日韓関係を位置付けようとする構想を、「国際公共財としての日韓関係」というテーマで、学会などで発表する機会を数多く持った。
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