平成16年度は、内戦の発生と国際社会の対応を、国際秩序における暴力の抑制という観点から理論的に考察することを主眼とした。主権的な管轄の範囲を空間的に画定する国境には、国際社会を構成する諸国家に対して内政不干渉と武力不行使という共通の義務を課すことによって国際秩序を維持し、暴力を抑制することが期待されてきたものの、国際社会が境界についての理解を共有して、内政不干渉と武力不行使の規範を共有しさえすれば、武力紛争は回避されるというものではない。一次大戦、二次大戦、そして冷戦といった主要な国際紛争の終結にあたって国際社会がどのような「独立の領域的基盤」(実効統治、自決、領域的現状維持など)に基づいて新国家の独立を承認したかということが、その後の国内における武力紛争の勃発と、それに対する国際社会の対応に影響を及ぼすなど、国際政治過程と国内政治過程とが連動してきた。 このように国内秩序と国際秩序とが互いに共振することに着目しつつ、国家形成と政治的暴力との関連、領域の国際的再編と国内マイノリティ問題、紛争の空間的解決の可能性、アイデンティティと武力紛争との相互規定関係、国内和平と国際和平との比較対照、(紛争原因論と整合的な)平和構築論、破綻国家と内戦などの諸論点について先行研究を概観しながら、紛争原因論と国際介入論との理論的統合の鍵を探った。この過程で、「共振する国内・国際秩序研究会」を組織し、東京大学社会科学研究所において三回の研究会を開催した(各回の報告者は、順に、篠田英朗氏、石田淳、武内進一氏)。また、石田は2005年3月に、International Studies Associationの年次大会(ホノルル)において"Civil Wars and the Spatial Organization of International Politics in Transition."と題する研究報告を行った。
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