食の安全・安心が叫ばれる一方、食糧資源をめぐるグローバルな競争が激化し、人びとの「食」にたいする関心が日増した高まってきている。本研究では、こうした現状認識にもとづいて、生産国と消費国との格差拡大の要因をグローバル化構造に求めて分析をおこない、あらたな南北問題の局面を解析してきた。その結果、あたらな自由貿易機構として発足し、活動してきているWTO(世界貿易機関)による世界公共秩序統治の課題や、「食」のグローバル化構造から生起しているこんにちの食糧危機が不可避的関係であることを突き止め、その実態を把握することとなった。なかでも、BRICsと呼ばれるブラジル、ロシア、中国、インドの経済的台頭は著しいなか、WTO体制下での農業分野での合意が遠ざけられた背景にはこれら諸国間の連携外交が功を奏していることを解明するにいたった。 さらに、「食」のグローバル化構造は、投機資本によって食糧危機の様相を深めようとしている現在、見逃すことができないこんにち的な問題となり続けていることをみれば、時期を得た研究課題であったといえる。
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